四川料理 巴蜀
福岡市美野島(一時休業)
四川料理 巴蜀 オーナーシェフ 荻野 亮平
2007年に福岡市東月隈で創業し、美野島に移転した後も中国料理の名店として熱い支持を集めてきた『巴蜀』が、一旦閉店することに。いったいなぜなのか、オーナーシェフの真意を探ります。
一旦閉店することを決心した経緯とは
これまで、お客様に喜んでほしいという一心で、料理のことをいろ
いろと勉強し、中国料理を突き詰めてきました。その積み重ねたものと、目の前に残っている課題があまりに大きくて、このまま続けていくのは難しいと感じるようになりました。
やりたいことを一つ一つ自分のなかでクリアしてきたところ、より難しい課題だけが目の前に残ってしまった。それをクリアするためには、自分により高いスキルが必要だと思ったんです。そこで、一旦店を閉めて、自分のスキルを磨く努力をしようと思いました。
たくさんのお客様に来ていただいているなかで、店を止めるというのもどうなのかなと、葛藤はあったんですけど、どこかで止めて勉強する時期に入らないと、ずっと同じ悩みが付きまとう。そう考えると、店を閉めて前向きに勉強するという判断は間違っていないのかなと思います。
中国の伝統料理を表現したい
わたしが教わった台湾料理の親方は、「中国料理には、日本人の知らないルールがある。それを無視してつくった料理には価値がない」と言っていました。外国の料理だからといって、日本人が好き勝手にやっていいわけじゃないし、ただ、おいしければいいというわけじゃない。やはり、中国の食文化を大事にしなくてはいけません。
どうすれば、中国の文化を感じながら、お客様に食事を召し上がっていただけるかを考え続けてきました。
召し上がっていただいて、胃腸が重くなるような料理はつくりたくない。でも、中国伝統料理の本を見て、レシピに忠実につくったとしても、使う油の量が多くて食べた人の身体がしんどくなることもあります。だから、自分はそのへんを工夫して変えるようにしています。やみくもにモダンに走るのではなく、あくまでもお客様にご満足いただけるように伝統料理を現代に表現する、そんなレストランが一番いいなと思います。
3年後の『巴蜀』復活へ向けたヴィジョン
料理について勉強して自分自身が納得できて、スキルアップして自分の調理人として価値が高まっていくことを、自分のなかで実感できることが喜びです。その喜びを持続できれば、どんな状況に置かれても楽しめるし、希望というものが生まれてくると思います。料理の世界って努力が必ずしも実るわけじゃないと思うのですが、実らせるための種っていうのは自分でいくらでも蒔けると思っているので、その種が芽吹くのを待ちながら生活するのもそんなに悪くないんじゃないかな。
3年後に再開したときの店の形は、自分のなかではもう定まっています。中国の食文化を現代のお客様に合う料理として提供したい。それが実現するかどうかは、これからの自分の活動次第だと思うので、精一杯努力するつもりです。そして、3年後のお客様にも「新しくなってよかったね」と喜んでいただける店にしたい。
みなさん、3年後の『巴蜀』にも、ぜひお越しください。