お料理は
訪れる方に合わせて変化します

こにし家

兵庫県三田

こにし家 主人 熹志 侑紀但 / 若主人 小西 智允

一品料理がメインの親しみやすい居酒屋が、より洗練された店に生まれ変わったきっかけは、修業から戻ってきた若主人のひと言でした。そこから、さまざまな探求が始まります。

料理には「流れ」とメリハリがある

侑紀但さん:わたしが店を始めたときは、「一品料理を出す居酒屋」という感じでしたが、料理の修業から帰ってきた息子の智允が、「京都の店は流れをすごく大事にしている」と言ったときから店が変わり始めました。 智允さん:当時のうちの店は、おいしい料理がバンバン出てくるけど、メリハリがない。お腹はいっぱいになるんですけど、「またこの店に来たい」と思わせるものが足りなかったんです。 僕は京都の料亭でお世話になっていたんですけど、そこでは月の初めにコースの流れとか、お出しする器の順番を決めるんですね。「この料理を食べた後は、あの料理を食べたくなるはず」という感じで。そこまで考えないと、心地いい料理は出せないと気づいたんです。そこから、料理に「流れ」が生まれるように、店を変えていきました。

ワインが教えてくれたテロワールの世界

智允さん:店にワインを置くようになって、料理が変わっていきましたね。

侑紀但さん:料理の新しい感覚を教わったのは、赤ワインからです。お客さんから勉強させてもらったのはもちろんですが、ワインからも多くのことを学びました。

智允さん:ワインを勉強していく過程で、醸造家が深い考えからワインをつくっていることを知って、料理ももっと考えんといかんなと思ったんです。ただ、お酒を売るだけではなくて、お酒をつくった人の気持ちとか、そのお酒を産んだ土地の風景とかを、感じてもらえるような料理が出せるといいなぁと思い始めたんですね。

侑紀但さん:その食材が自然と備えた持ち味を引き出せたら、ワインには必ず合います。ただ、添加物とか余計な香りとかがつくとワインには合わなくなる。

智允さん:自然の食材をどうやって生かすかが大事。テロワールというか、食材にはその土地ならではの味というのがあるはずなんです。魚も獲れる環境で味が違うし、どんな人がその魚をわたしたちにつないでくれたかも大事。その人たちが雑に扱うと魚にストレスがかかって味が落ちるので。そういうところも意識するようになったのもワインの影響でしょうね。

お酒が飲めなくても楽しめる「ライブ」な店

智允さん:最近は飲めないお客様にどれだけ興味を持ってもらえるかというところを考えています。自分も最初はお酒が飲めなかったので。うちがお酒が飲める人じゃないと来れない店になってしまうのは違う。

一方で、お酒と料理のペアリングの楽しさというものが間違いなくあるので、飲めない方も、お酒を舐める程度に味見して料理を召し上がってほしい。そうすれば、わたしたちが料理にこめている深い思いもわかって、おもしろいと思います。

 

侑紀但:こっちのお客さんは白ワインを飲んでいる、あっちではほかのお酒を飲んでいる、こっちは飲めないお客さん。そんな状況で合う料理を出さなければいけない。

「ライブ」ですよ。お客さんとの「ライブ」です。

 

智允さん:だから料理する方は結構大変なんですよ。だけど、そんなライブ感のある店のほうがおもしろいんじゃないかと思い始めた。『こにし家』をいろんな角度から楽しんでもらえますしね。